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[最新研究紹介]子供の語学能力に影響を与える、社会経済格差を背景とした脳機能の違い

posted 2018/10/12

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子供の語学・学習能力は、社会経済的格差に左右されている

アメリカでの調査によると、子供の将来の社会経済的状態を予測する強い因子の一つが母親の教育レベルである。家庭の社会経済的状態が低いと、栄養が不足した食事や、非常にうるさい劣悪な環境での生活、また親が子供にあまり声をかけなかったり、会話に簡単な言葉しか使わないことも、子供から学習の機会を奪うことにつながる。
Betty HartとTodd Risleyによる調査では、社会経済的に上位の家庭にいる子供は、下位の家庭の子供よりも時間当たり数百語多くの単語を聞いており、3歳までに3,000万語の差が蓄積されていることが示された。より豊かな語彙や、励ましなどの言葉を含む、多くの言葉を聞いた社会経済的に上位の家庭の子供たちは、学校でのより高い語学スキルを達成する。

母親の教育レベルの差が、聴覚の神経活動の差、更には音を聞き取る能力の差となっている

Nina Krausは、同じ高校に通う、年齢、性別、人種が同じで、母親の教育レベルだけ低学歴グループと高学歴グループに分けた2つのグループの、読み取り能力、ワーキングメモリ機能、脳神経活動を比較した。

読み取り能力やワーキングメモリ機能は、下記などのテストを行い評価した。
– 示された文章をどれだけ速く正確に読めるか
– 聞いた単語を書き出す
– 聞いた単語や数字を、指示された順で答える

脳神経活動は、[ba]と[ga]を聞いた時の聴性脳幹反応を計測した。聴性脳幹反応とは、音を聞いた時に音の信号が耳から脳幹を通って聴覚野に達するが、信号が脳幹を通るときに発生する生理信号である。
聴性脳幹反応は下記3つの指標で評価した。
– 波形の安定性
– スピーチを聞いた時の反応の強さ
– 音を聞かない時の自発的な神経活動の大きさ

実験の結果、母親の教育レベルが低学歴グループの子供は、聴性脳幹反応の波形が不安定であり、スピーチを聞いた時の反応が低く、音を聞いていないときでも神経活動の振幅が大きく、ノイズが多かった。また、文字を読む能力や、聞いた単語や数字を支持された順で答えるテストの成績が低かった。

このことから、母親の教育レベルが低学歴グループの子供は、神経活動が不安定であり、反応が弱く、ノイズ交じりであることから、聴覚系の処理がうまくいっていないことが推定される。読み取り能力がワーキングメモリ機能が低いことは、聴覚系の未成熟が原因の一つと考えられる。

子供の語学能力を伸ばすために、脳神経科学ができること

子供の語学・学習能力は、社会経済的格差に左右されており、その強い因子の一つが母親の教育レベルである。
この格差を埋めるための適切な対処方法を考える際には、この研究で示された、脳の機能・成熟過程の理解が役に立つだろう。

References:
The Impoverished Brain: Disparities in Maternal Education Affect the Neural Response to Sound

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