DARPAはこれまで18年間侵襲的な技術で「義手・義足を動かすBMI」や「鬱の改善・記憶力の改善」などを行ってきましたが、手術が必要な侵襲的な技術の場合は試せる人が限られてしまうためN3のプログラムが始まったという経緯があります。

N3の非侵襲(Nonsurgical)研究には2つの方向性があります。

  • 手術などを全く伴わない完全非侵襲技術
  • 手術を最小限に抑えた(minutely invasive)最小限侵襲技術

それでは今回選ばれた6つの研究を簡単に紹介します。

 

1.【最小限侵襲】Battelleチーム。主任研究者はGaurav Sharma博士

ニューロンに対して読み書き可能な「電磁ナノトランスデューサー」と、頭蓋骨の外から信号をやりとりする「トランシーバー」を対にした、最小限侵襲的なインターフェースシステムの開発を目指している。
電磁ナノトランスデューサーは目的のニューロンの近傍に、外科的な手術なしで送り込まれる。トランスデューサーはニューロンからの電気信号を磁気信号に変換し、磁気信号を外部トランシーバが記録・処理する。またその逆も可能で、双方向通信を可能にする技術。

2. 【完全非侵襲】カーネギーメロン大学のチーム。主任研究員はPulkit Grover博士

脳活動の読み書きを行う方法として、完全に非侵襲的な装置の開発を目指している。

・ニューロンから情報を読み取る方法:音響光学的なアプローチを用いる。超音波を使って、脳に出入りする光をコントロールすることで、神経活動を検出する技術を使用する予定。

・ニューロンに書き込む方法:干渉し合う電場を用いる。電界に対するニューロンの非線形応答を利用した書き込み方法によって、特定の細胞タイプを局所的に刺激することを可能にする。

3. 【完全非侵襲】ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所チーム。主任研究員はDavid Blodgett博士

脳から記録するための完全に非侵襲的な、コヒーレントな光学システムの開発を目指している。
組織中の光路長の変化を直接計測する。この技術は、組織中の光路長の変化が神経活動に相関するという特性を利用している。

4. 【完全非侵襲】パロアルトリサーチセンターチーム。主任研究者はKrishnan Thyagarajan博士

完全に非侵襲的で脳への書き込みが可能な音響磁気装置の開発を目指している。
超音波と磁場を対で用いることで神経調節のための局所的な電流を発生させる技術。このハイブリッドアプローチは、脳のより深部を局所的に神経調節できる可能性がある。

5. 【最小限非侵襲】ライス大学のチーム。主任研究者はJacob Robinson博士

脳に読み書きを行うために、最小の侵襲的な双方向システムの開発を目指している。
拡散光トモグラフィーを使用し神経組織における光散乱を測定することによって、神経活動を推測し脳の情報を読み取る。
ニューロンの磁場に対する感度を向上させることができる磁気遺伝学的アプローチを使用し、脳に対する書き込みを行う予定。

6. 【完全非侵襲】Teledyneチーム。主任研究者はPatrick Connolly 博士

マイクロ光ポンピング磁力計を使用して、神経活動と相関する小さな局所的な磁場を検出する、完全に非侵襲的な統合デバイスの開発を目指している。
ニューロンへの書き込みに集束超音波を使用する予定である。

これらの研究チームは軍事利用・民生利用についてDARPAからのアドバイスが受けられ、また規制当局からのアドバイスももらえるそうです。